ヒトの身体は、どこかに異常をきたすと「痛み」というアラームで知らしてくれる仕組みになっています。その中でも特に腰は異常を起こしやすい場所でもあります。普段あまり意識することはないのに、痛みがあるとすごく気になってしまうのが腰です。
常に体を支え動く時の軸になるため、腰痛がひどくなるとどんな姿勢をとっても痛みを感じ、何かをする意欲さえ失われてしまいます。
「腰」という字は、「月(にくづき)」に「要(かなめ)」と書くように、まさに身体のかなめ。一番負担がかかりやすく、かつ一番重要な部分でもあるのです。普段から姿勢や動作を意識して、快適な生活が送れるよう心掛けたいものですね。
しかし、身体の要であるからこそ起こりやすいのが「腰痛」。ヒトの進化で4足歩行から2足歩行になった上でのいわば宿命とも言われています。
一生のうちで経験しない人というのはゼロに近いといわれるぐらい多い腰痛ですが、一概に腰痛といっても症状や原因は同じではなく千差万別です。
一口に腰痛といっても、対処法はおのおの違います。それぞれにあった施術が最も重要です。
なぜ、腰が痛くなるの?
首から腰までつながる背骨(脊椎)は、緩やかなS字カーブを保つことで頭の重さを支え、運動や動作による衝撃を和らげています。また、脊椎の周りの筋肉や靭帯・椎間板もその役目を担っています。
しかし、激しい運動や悪い姿勢・長時間の同じ姿勢などによる骨や筋肉の疲労・変形や、運動不足・歳を重ねる上でので筋肉・骨の衰えによっては腰痛を引き起こします。
さらには、内臓の疾患やストレスなども腰痛を引き起こす原因とされています。
腰痛を引き起こす主な原因
腰痛には様々な原因があります。大きく分けると以下の様になります。
腰そのものに起因する場合
・筋肉の疲労や炎症によるもの(筋筋膜性腰痛)
・関節の捻挫や椎間板の傷害(ぎっくり腰、腰部椎間板ヘルニア)
・骨の変形や変性(変形性腰椎症、脊椎分離症・すべり症、脊柱管狭窄症、骨粗鬆症)
・骨盤・股関節・膝・足など他の運動器の影響
ストレスや不安など精神的影響による場合
・精神的ストレス(寝不足 仕事 人間関係など)
・肉体的ストレス(重い物を持つ 長時間の座位など)
・環境的ストレス(気温や気圧 湿度の変化など)
内臓疾患が関係する場合
腰が痛いとき、腰の骨や筋肉・靭帯などを傷めただけだと考えがちですが、実際は内臓の疾患から腰痛を引き起こす場合も少なくありません。
(慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胆嚢炎、胆石症、慢性膵・腎炎、尿路結石、子宮筋腫など)
一概には言えませんが、運動器的な痛みの場合は動作時に痛みが増すことが多い反面、内臓的な痛みの場合は動作に関わらず痛みの変化が見られない事が多いです。腰痛の他にも気になる症状がある場合は、一度医療機関に受診される事をお勧めします。
椎間板ヘルニア・狭窄症などで手術をお考えの方へ
急性の腰痛(ぎっくり腰・筋筋膜性腰痛等)に関しては比較的短期間かつ予後も良好で治癒しやすいのですが、慢性の腰痛、いわゆる脊椎管狭窄症・椎間板ヘルニア・すべり症・分離症・坐骨神経痛等と病名のつけられる疾患に関しては、様々な治療を受けても症状が改善せず手術を迫られている方・手術を受けたにもかかわらず症状が改善しない方が多く見受けられます。
このような症状は「椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症で神経が圧迫を受けると痛みやしびれが生じる」「椎間板の老化によって生じる椎間関節症・椎間板症・すべり症・分離症など脊椎の構造異常や変形が痛みの原因」と説明を受けることがほとんどです。
確かに、その方の状態によってはその部分で障害が起こり、痛みが出ている場合もあります。しかし痛みというのは、通常神経線維の先端に付いている痛みセンサーだけが感知し、電気信号を脳に伝えることによって感じます。ヘルニア等で圧迫を受ける神経根というのは、痛みを脳に伝えるいわば通路であって神経の途中で痛みが発生・感知されることはありません。例えると、マイクで話すとスピーカに音が伝わりますが、マイクとスピーカーを繋ぐ途中のコードに話してもスピーカーに音は伝わらないということと同じです。
実際、ヘルニアやすべり症などの症状を持った方・腰が大きく曲がった年配の方でも痛みやしびれを感じない方は多数おられます。また、圧迫や老化が原因であれば加齢と共に腰痛の方が増えるはずなのですが、現在では年配の方より30代~40代の方のほうが腰痛を訴える割合が多いということも言われています。
そのようなことからも、慢性の痛みの原因の大半は筋肉による痛みと考えられます。この痛みには、ストレスやトラウマ的なもの・脳の痛みの記憶など様々なものが関与することもわかっています。
知覚神経の興奮やストレス的なものを受けると、交感神経や運動神経が緊張し血管が収縮します。それが習慣化すると、自分でも気付かない些細なことに対しても、条件反射的に交感神経の興奮と血管の収縮が起こるようになります。血管が収縮すると末梢の血流が悪くなり、細胞組織の酸素が欠乏状態になります。酸素欠乏が起こるとそれに伴い発痛物質が生成され、その結果痛みを感じるようになります。痛みを感じると知覚神経の興奮が起こり悪循環を繰り返します。こうした痛みの悪循環が繰り返されると、脳にその痛みの情報が記憶されわずかなことで反応し痛みを感じるようになります。これが、慢性痛の原理です。
また、長期間にわたり持続して痛みの信号が脳に送られると一種の記憶として信号が神経回路に残り、痛みの原因がなくなった後も痛みの信号を送り続けることがあります。
結論として、ほとんどの筋骨格系の痛みは構造的な異常で起きているのではなく、一種のストレス反応である生理的な要因が大きく関与して起こっているとも言えます。
長々と書きましたが、身体を部分的に考えるのではなく全体的にとらえることによって、その悪循環を断ち切り本来の身体の流れを取り戻すことが症状改善の糸口であり、けっしてヘルニアだから狭窄症だからしょうがないとあきらめてしまう症状ではありません。
当院における腰痛に対する施術の考え方
上記のように、腰痛といえども様々な原因が考えられます。治療院によっては「なんでもお任せ下さい」という院もありますが、当院では何による腰の痛みかが重要であり、中には外科的な手術を必要とする腰痛もあると考えます。
また症状が改善された後も、以前と同じような日常生活を送ってしまうと再発の原因となってしまいます。皆さんが毎日をより快適に過ごして頂けるよう、お一人お一人の状態に合わせて日常における注意点・ストレッチ・メンテナンスなどのご提案もさせて頂きながら施術にあたらせて頂ければと思っています。
腰痛でお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。原因を明確にした上で、最善の対処法を提案できればと思っています。